
こんにちは。「コミュニティFM大図鑑」のコシバです。
コシバが長年調査・収集した情報を分析して、目黒先生の解説と共に紹介していく「コミュニティFM大分析」。
2024年8月の「いいね!このまち!このラジオ!」では、コミュニティFM局で放送するユニークな防災番組についてご紹介しました。
9月1日は「防災の日」。多くのコミュニティFMは防災を設立の理由に掲げています。この番組でもこれまでいろいろなコミュニティFMをご紹介して、各局の防災への取り組みを伺ってきました。
そして、普段こそ防災にとって大事だということも、この番組では繰り返しお伝えしてきました。
しかし、大事なことだと分かっていても、普段の生活の中で防災番組を意識的に聴いているという方は少ないかもしれません。コミュニティFM局側も「聴いてもらえる防災番組」を作るために、さまざまな工夫をしています。
今回はそんな全国のコミュニティFMの中から、ユニークな防災番組をピックアップしてみました。
■学校の委員会活動のように防災に取り組む
●B-FM791(徳島県徳島市)『ラジオとくしま防災委員会』

徳島県で唯一のコミュニティFM局、B-FM791。徳島市が主なエリアですが、県内の半分以上の世帯で聴けるそうです。
このB-FM791で、地元で活動する防災士が中心となり立ち上げた“ラジオとくしま防災委員会”は学校の委員会活動のように、防災をキーワードに毎回防災士や企業・団体の方々が集っています。
徳島で暮らすひとりひとりが災害について知り、考え、行動することで、災害から命を、そして未来を守れるようになるためのラジオ番組です。
15分間なので、さくっと気軽に聴けるのもいいかもしれません。ポッドキャストでアーカイブを聴くこともできます。
番組ではゲストを招いて防災トークをするだけでなく、防災に関する体験施設やイベントを取材・報告したり、防災委員会が防災講座や段ボールトイレづくり、アウトドアの技術を活用した防災、フェーズフリーなどさまざまなテーマでワークショップを開催するなど、ラジオの枠を超えたさまざまな活動を行っています。
またB-FM791では月に1回、板野町で「オレンジエフエム」というミニFMを道の駅いたので開いて、そこでも防災委員会のメンバーが防災に関する話をしています。
■大学生の目線で防災を考える
●えふえむ草津(滋賀県草津市)『Happy BOUSAi』

えふえむ草津で放送している『Happy BOUSAi(ハッピーぼうさい)』は、関西大学社会安全学部の近藤誠司教授の研究室と草津危機管理課が協力して、大学生の目線で防災の情報を伝える番組です。
近藤ゼミはコミュニティFMやケーブルテレビなどと連携して地域防災の啓発に取り組んでいて、これまで「ぼうさい甲子園」のグランプリや、JCBA近畿コミュニティ放送賞の優秀賞などを獲得しています。
『Happy BOUSAi』は2017年6月にスタートし、これまで阪神・淡路大震災や、ソウルの梨泰院起きた雑踏事故など、実際に起こった災害や事故についての解説や、学生が利用する防災アプリの紹介などを放送してきました。
また、2011年の東日本大震災以降、被災地へ向けて様々なアクションを起こしているアーティスト・RADWIMPSについて、3回に渡って取り上げてきました。
2024年元日に発生した能登半島地震では3月と5月の2度、被災地を訪れてボランティア活動を行い、現地の様子や活動を通じて感じたことを報告しました。被災した方からは「来てくれてありがとう。 周りの人にも被災地の状況を伝えてほしい」と言葉を掛けられたそうです。
兵庫県尼崎市に開局したみんなのあま咲き放送局でも、2023年から同様の番組『あま咲き防災ラボ』を放送しています。内容は『Happy BOUSAi』とは異なります。
防災といっても自然災害だけでなく、人的災害や事故なども取り上げ、それにコミットするアーティストを取り上げる視点は「報道」や「ドキュメンタリー」に近くとてもハイレベルだと思います。
■「声優×防災」異色の防災番組
●さくらFM(兵庫県西宮市・芦屋市)『さくらSOS隊』※2024年3月で終了

『さくらSOS隊』はちょっと変わり種の防災番組です。テーマが「声優と防災」で、放送時間も深夜0時からと、かなり異色のものです。
声優さんがパーソナリティーを務めるコミュニティFMの番組は多いですが、防災を掲げた番組はおそらくこれだけだと思います。
タイトルの「SOS隊」は、西宮市が舞台となったアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』に出てきたSOS団がモチーフとなっていて、「世界(S)を大い(O)に盛り上げるスペシャル(S)隊」の略になっています。
メインパーソナリティーは声優さんが務め、なぜかフランスでも人気という兵庫県で防災・減災活動をするローカルヒーロー「未来特救ゴッドイーグル」の防災ラジオドラマや防災トークがメインですが、 アニメなどのサブカルトークもあるという、盛り沢山な1時間です。
声優さんで興味を引くというのは面白い視点だなと思いました。残念ながら番組は終了してしまいましたが、またこんな番組やってくれないかなと思います。
アニメの人気は世界的レベルなので、声優をパーソナリティーにすることで広く若者や外国人にも興味を持ってもらえるかもしれません。これぞフェーズフリーな取り組みと言えるでしょう。
■お酒を飲みながら防災トーク
●BAN-BANラジオ(兵庫県加古川市)『防災ショットバー』

『防災ショットバー』を製作しているのは、約2000人が暮らす「加古川グリーンシティ」という集合住宅の住民による自治組織「グリーンシティ防災会」です。
グリーンシティ防災会は「楽しく防災活動をやろう」を掲げて、自警団の結成や防災マップの作成、防災用井戸の設置、あいさつ運動やもちつき大会、イカ焼きの炊き出しといった地域コミュニケーションを高めるための数々の取り組みを行っています。
また、ホームページでの情報発信や、テレビの空きチャンネルを使った住宅内独自の番組の放送、携帯電話への情報伝達など、その時々に合わせた新しい技術も積極的に取り入れています。
『防災ショットバー』は2007年にインターネットラジオの『楽しく防災ラジオ』としてスタートし、翌2008年にBAN-BANラジオでも始まりました。
元々、ショットバーのようにお酒を飲みながら防災の話をするというコンセプトだったことから、2009年に今のタイトルになりました。
東日本大震災のときは被災地を支援するために東北のお酒を飲んでいましたが、2024年の能登半島地震を受けて、現在は北陸のお酒を飲みながら番組を進行しています。
内容は防災に関するトークが中心ですが、時にはラジオドラマに挑戦するなど、バラエティーに富んでいて、放送18年目に入りました。こちらも第1回放送分からアーカイブが聴けます。
ありそうでなかった画期的アイディア。お酒を楽しむことは日常的に全国的に行われていることなので、これもフェーズフリーな番組かもしれません。『みんなのサンデー防災』でもお酒を飲みながらやってみたいですね。
ご覧頂き、ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。
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